色素異常個体
たまにピンク色のバッタが発見されてニュースになります。
直翅にはもともとピンク色の色素を持っていますが、
遺伝的な異常によりピンク以外の色が出現しなかったために、
体色がピンク色になってしまうことがあるからです。
この異常は遺伝するため、ピンク色同士の個体を交配させることにより、
人工的にピンク色のバッタを作出できることが確認されています。
また、体色の一部分ですがピンク色のマダラバッタが野生で累代を繰り返していて、
高確率でピンク色が入っているマダラバッタの個体群も存在します。
中国ではピンク色のキリギリスが、オーストラリアではピンク色のウマオイが発見されています。
日本ではこれらの仲間ではまだピンク色は発見されていませんが、出現する可能性はあると思います。
ちなみに脱皮した個体はピンク色から通常の体色に戻ってしまうことがありますが、
抜け殻には色素が残るためピンク色の抜け殻が残ります。
標本に残す際に蒸気軟化などで熱を当てると褐色に変色してしまいますので注意が必要です。
死後すぐに展脚をしてしまい、冷凍庫で1年かけてゆっくりと乾燥させると、
体色が綺麗に残りますので、この方法での標本化をお勧めします。
管理人は1年に1匹〜2匹程度、色彩異常の直翅を見かけますので紹介します。
オンブバッタ (2010/09/22)
八丈島の植物公園で発見しました。
偶然でしょうが酸化したスコリアが保護色になっていました。
ショウリョウバッタ (2011/07/31)
養老渓谷の農道で発見しました。
周囲の草丈が短かったためとても目立っていました。
鳥などに捕食されなかったことが不思議です。
ヒロバネヒナバッタ (2011/07/16)
ピンボケしていてすみません。丸瀬布の草地で発見しました。
入り込んだ場所に逃げられたため、捕獲後に路上に置いて撮影しました。
ヒナバッタ (2012/07/11)
ぐんま昆虫の森で発見しました。ヒナバッタはピンク個体の出現率が高いように感じます。
ヒナバッタ (2012/08/23)
小清水原生花園にて。
観光客が多く採集禁止区域でもあるので、周りの目が気になってしまい、
ヒナバッタに草が被っていましたが妥協して撮影しました。
ショウリョウバッタ (2012/07/16)
多摩川中流域の河川敷で発見したピンク色と緑色のツートンカラー個体です。
ショウリョウバッタの幼虫はたまに面白い模様の個体が出現します。
ヒメクサキリペア (2012/08/19)
クサキリやクビキリギスの仲間はピンク色になることが多く、
多産地では何匹も同時に発見することがあります。
ヒメクサキリ (2012/08/11)
宿りバエに寄生されて腹部が膨張しています。
色素異常個体はその外見の派手さから、宿りバエに発見されやすく寄生率が高いように感じられます。
同産地で8匹の色素異常個体を採集しましたが、そのうち5匹が宿りバエに寄生されていたこともあります。
マレーコノハギスペア (2012/10/27)
ピンク色のマレーコノハギスです。
海外ではピンク色のクダマキモドキやクツワムシが見つかっています。
トノサマバッタ (2010/10/03)
元々トノサマバッタは色彩変化に富んでいますが、
まれに黒化した個体が見つかりニュースになることがあります。
写真の個体は八丈島の緑地で発見し、周囲に同様の黒化個体が10匹以上確認できました。
終齢幼虫を持ち帰って羽化させましたが、抜け殻は色素が残っていて真っ黒でした。
トノサマバッタ (2012/07/12)
色素異常とは違うのですが転移相になっていて体色が赤と黒のツートンカラーです。
この個体は多摩動物園で飼育されていて、多くの昆虫園や研究室で飼育されています。
確か飼育下では転移相までしか作り出せていなく、野外でのみ完全な群生相が採集できたかと思います。
おそらく親種からの運動量が群生相となるトリガーになっていると思っているのですがどうなんでしょうか・・・。
ヤブキリ(タンザワヤブキリタイプ?) (2012/06/14)
先天性の色素異常とは違いますが・・・。
ヤブキリの仲間は若齢幼虫から育てると脚が黒化して後腿節下部が白化する傾向が強いです。
この個体は大岳山で若齢幼虫を採集して飼育したものです。野外ではこの黒化はほとんど見られません。
クサキリ (2010/08/10)
クサキリの褐色型はまれに濃淡が極端な個体が出現します。
写真の2個体は成虫で採集してから1週間ほど飼育していますので、羽化直後というわけではないです。
この2個体は幕張のクサキリ多産地で発見しました。
ちなみに、この個体の子供達の体色は濃くも薄くもなかったので体色の濃淡は遺伝しないようです。
トノサマバッタ (2012/07/12)
多摩動物公園で累代されている白いトノサマバッタです。
一般的な個体よりも体色が薄く、前翅の斑紋もほとんど消失しています。
オナガササキリ (2012/10/08)
海岸付近の良質な多産地で白化個体を発見しました。
顔面に特徴的な模様が入っています。
管理人は初めてみましたが、時折出現するようであまり珍しくはないそうです。
ウスバカマキリ (2012/09/09)
ウスバカマキリの多産地で1匹だけ真っ白の個体(わずかにピンク色入り)を発見しました。
とても目立っていたのですが、運良く捕食者に見つからなかったのでしょうか。
ちなみに20日後にもう一度発見ポイントで探しましたが見つけられませんでした。
寿命にしてはまだ早い時期なので移動したか捕食されてしまったようです。